2015年7月11日、任天堂代表取締役であった岩田聡氏が胆管腫瘍のため亡くなられました。
まずは深く哀悼の意を表します。
基本的にうちのブログでは個人の逝去を扱うことはないだろうと思っていたのですが、やはりコンピュータゲーム(特に家庭用向け)に多大な貢献を果たした偉大な人物であるし、個人的に尊敬しているゲームクリエイターでもあるため、こっそりと書き記しておこうと思います。
岩田聡さんの功績や逸話は数知れず。
高校生時代からプログラムに熱中し、天才と呼ばれたプログラマーが多額の借金を背負う会社の社長となり、のちに当時の任天堂社長であった山内博氏の鶴の一声で任天堂社長へ大抜擢!
プログラマ出身でありながら一本道に高性能化を突き進むゲームハードに危機感を覚え、WiiやDSを発売、Wiiリモコン+ヌンチャクや大人の○○シリーズらを生み出し、普段ゲームをプレイしないような人々にも気軽にゲーム機に触れてもらえることに成功しました。
注目すべきは、そのバランス感覚とリスクマネジメント。
任天堂といったらマリオやゼルダを始めとした高いクオリティを誇るソフトウェアの数々。
それらの価値を守る一方、ちゃっかり新しいビジネス形態(アイテム課金など)についても模索するようなしたたかさもありました。
大黒柱はどっしりと構え、機動性のあるコンテンツは時代の流れに合わせて変化をしていく、言うは易し行うは難しなことです。
そして新しい娯楽や流行にも柔軟に対応。
動画サイトが誕生・隆盛し、ゲーム関連ではプレイ動画や実況プレイなどが良くも悪くも気軽に楽しまれる時代になりました。
動画コンテンツに対し柔軟な姿勢を公表するのは海外メーカーのほうが圧倒的に多い中、あの任天堂がコンテンツ使用に対して正式な許諾を与える『Nintendo creators program』を率先して展開したことは大きな衝撃でした。
【他サイトさまへのリンク】岩田社長の人となりや生き様の片鱗を見ることができるリンク集。
糸井重里さんのほぼ日刊イトイ新聞ではこれまでの岩田聡さんに関するコンテンツがまとめられています。
岩田聡さんのコンテンツ。 - ほぼ日刊イトイ新聞
特に『社長に学べ!』ではプログラマ時代からHAL研での社長体験、社員たちとの面談や岩田社長の生き様についての対談があり、あなたはマンガやドラマの主人公か!っていうほどの面白い実体験の話が読めます。
4Gamerさんでは昨年12月ごろの岩田社長へのインタビュー記事があります。
任天堂・岩田氏をゲストに送る「ゲーマーはもっと経営者を目指すべき!」 - 4Gamer.net
エンジニアの視点から見る経営の話とネットのない時代とある時代における環境の違いなど。 苦境に立たされるWiiUへの反省点や、コンテンツをどう守りどう動かすかなどなど。
このときには話が進んでいたであろうスマートフォン向けの業務提携を隠しつつの岩田社長の腹芸などが読み応えあります。
任天堂公式ホームページには『社長が訊く』シリーズや『Nintendo Direct』のアーカイブへのリンクがあります。
社長が訊く リンク集 - 任天堂公式ホームページ
この社長が訊くシリーズは開発者たちの苦労ややりがいが伝わってきて興味深いです。
個人的には斬撃のREGINLEIVの話がお気に入り。
開発会社サンドロットの熱意、そして任天堂からの度重なる無茶振りや、血と部位切断に関する表現とガイドラインなどの話が面白いです。
そしてゼルダ関係の話もおすすめ。
【個人的にここがスゴイ】インターネットが発達し、情報が錯綜したり語弊を招きやすくなったところに、社長自らが動画にてプレゼンテーションを行うという逆転の発想から生まれた『ニンテンドーダイレクト』は、ネットで動画を楽しむ世代に大きく認知され、大会社の社長という遠い存在を身近なものに感じさせた。
ただの出たがりではなく、自身の人当たりの良さそうな雰囲気や物腰も客観視しての出演だったのは疑うまでもない。
特にスゴイと思っていたところは、どんなときでも品を崩さないところ。
ネットで悪口やネタにされているのを見ればだいたいの人間は不快感を示すが、岩田社長は「私はなぜこんな風に扱われているのだろう?」と分析することを忘れない。
感情的にはムッとしつつも、状況判断を欠かさず品を貶めないのは大の大人や政治家だって難しいはず。
任天堂のイメージを変えるほどの人格者ぷりは真似しようとしてもそうそうできるものではない。
さらにとかく勉強熱心であったこと、多忙のためプログラムを書くことをしなくなっても、現場の部下たちから新しい技術を教えてもらっていたとか。
常に新しい知識や文化、観点を更新し続けるようとするのは好きでなければやってられないはず。
そんな岩田社長だけど、根っこの部分はただのゲーム好きだったりして、ユーザーから見ても共感を得られるようなところを『社長が訊く』などで見せてくれるので、妙に親近感が沸いてしまう。
そして、GDCにて岩田社長が自らを「立場は社長だが、頭は開発者、心はゲーマー」の言。
ゲームを作って人を楽しませることが生きがいでもあった岩田社長ならではの言葉であり、私を含めて多くの人に感銘を与えたと思う。
【まとめ】突然の訃報は、勝手ながら親しいゲーム好きの仲間を失ってしまったようで、とても哀しく胸に穴が空いたような想いです。
55歳と早すぎる逝去は本当に残念でなりません。
これにて、最後までゲームを愛し、業界に尽力した岩田社長への深い敬意を込めて、独り言のような悼辞とします。
1. 無題
亡くなられて改めて思ったんですが
岩田社長って大企業の社長なのに不思議と身近な感じがします
一方的なものですが家族を亡くしたような感覚さえあります
まだ若かっただけに残念です